前回はロンドンで初めて住んだ語学学校に探してもらったホームステイの実体験について記録した。
今回は2つの物件について自分の体験を記したい。
Kensington の小さな部屋
最初の滞在先であるHammersmithのホームステイの次に住んだのが、自分で不動産と賃貸契約を結んだKensingtonの1部屋だった。
ホームステイで支払っている£720/月払えば、自炊したり、休日に部屋で勉強したり、好きな時にシャワーを浴びたり、洗濯もして、銀行口座を開設したり、もっと色々できても良いんじゃないかと思い、物件を探すことにした。
なので予算としては£700/月位で探していた。
学校の近くのHammersmithでこの値段帯で探し始めたが、なかなか気に入る物件が見つからず、Richmondで物件を探しても、£800/月位からだったのであきらめた。
Zooplaで色々と探していたところ、このKensingtonの物件を見つけ、下見に行った日に即決した。

学校までは歩くと40分位かかるが、バス1本で行けるし、何よりHigh Street Kensingtonという最高の立地だった。
ロンドンの高級住宅地のうちの一つで、伝統的なテラスハウスが立ち並ぶ場所だ。
この住宅街を歩くだけでも、ロンドンに来たという雰囲気を味わうことができたし、ましてやこれからここに住むんだと思うとわくわくした。
気に入ったところ
この物件を即決するほど気に入った点としては
- 好立地なのに、家賃£693とちょっとで自分の部屋が付いてくる
- 共用ではあるが、風呂、トイレがあって、好きな時にシャワーを浴びれる
- 汚い屋根裏ではあるが、底には自分の食材を入れれる冷蔵庫があり、オーブンと電子レンジと電気コンロが一緒になった調理器具もあるから、自炊をしようと思えば作れる
- 何よりも、この家賃には、光熱費や住民税(Council tax)が含まれていたから、お金のない学生には非常にありがたかった
- 家主のおじいちゃんが優しい人だった
- Holland ParkとHide Parkが近かった
などだ。
ホームステイよりも家賃が安く、自炊ができるのがとてもありがたかったし、
シャワーも好きな時に好きなだけ浴びれるし、
休日に自分の部屋で勉強することもできて、電気をつけても怒られない。
それに、こんな公園がすぐ近くにあったから、散歩していても楽しい。


近くには花で飾られたパブもある。

この物件を見つけた時は本当にお宝を見つけた気分だった。
物件の下見で分かった物件の老朽化
早速不動産屋に下見のアポを取り、実際に下見に行くと、家から出てきたのは80代位のスリランカ人のおじいちゃんだった。
ドアをノックしてもなかなか返事が返ってこなかったのだが、どうやら耳が遠くて聞こえなかったらしい。
おじいちゃんはこの家の家主で、1階部に住んでいて、週末は40歳位の息子が返ってくるとのこと。
部屋に入ると赤い絨毯の敷かれた廊下が奥に続いていて、スリランカカレーのレストランと同じ匂いがした。
廊下の右手にはおじいちゃん家族のリビングルームがあり、その隣の部屋はおじいちゃんの仕事場になっている。
高級住宅地なだけあって、リビングはとても広く、天井がとても高い。
映画で見たことのある高級住宅ってこういうことなんだと思った。
廊下の突き当りはキッチンになっていて、ここはおじいちゃん家族専有の場所だった。
廊下の左手には木製の手すり階段があり、4階まで続いている。
バスルームは2つあり、広いバスルーム(浴槽+トイレ+洗面台)は階段を上って2階と3階の間の踊り場に、小さいバスルーム(シャワー+トイレ+洗面台)は3階と4階の間の踊り場に設置されていた。
自分の部屋は3階だったので、どちらのバスルームも利用できたし、バスルームさえ空いていれば、自分の好きな時に好きなだけシャワーを浴びることができた。
下見の時点で気になったのだが、このバスルーム、窓がボロボロなのだ。
広い方のバスルームの窓は”Sash window”というもので、ビクトリア時代伝統的な窓なのだが、老朽化により傾いてしまっていた。

これは部屋の写真だが、この窓もSash Windowである。
木枠にはまった手前側の窓を上に引き上げて窓を開ける。
先ほどの広い浴室の窓は横幅がこの窓の3倍以上あり、かなり大きいのだが、傾いてしまっていて動かないだけでなく、手の届かない天井近くの部分に大きな隙間でできてしまっていた。
また、小さい方のバスルームは窓ガラスが割れたままになっていて、そこを段ボール紙でふさいでいた。
階段を上って一番上まで行くと、屋根裏部屋のような倉庫があるのだが、その中に冷蔵庫や小型電気コンロが置いてあり、”キッチン”となっていた。
倉庫なので、換気扇はついていないし、床の絨毯はシミだらけ、水道やシンクはもちろんないため、近くのバスルームの洗面台(駅のトイレにある手洗い台より小さい)でお皿を洗ったり、水をくむ必要があった。
外からみるととても立派な建物だが、やはり100年近く残存している家なだけあって、老朽化が激しい。
それでもこの物件を契約した当時は、多少汚くて、古くても、格安で自分のプライベート空間を手に入れられるこの物件は掘り出し物だと思って、即決した。
a 1 year contract with a 6 month break clause
ちなみにロンドンで賃貸を借りる際、仕事をしていて、定期的な収入があれば、家賃の月払いが可能である。
ちなみにロンドンで賃貸を借りる際、仕事をしていて、定期的な収入があれば、家賃の月払いが可能である。
まだ仕事を探している最中だったり、自分のように語学学校の学生の場合であっても物件を借りることは可能だが、前払いが基本となる。
相場としては、6か月分~1年分の家賃を一括で支払う。
自分の場合は契約を結ぶ段階で交渉し、3か月分は前払いとしてもらった。
現在語学学校の学生であり、学校卒業後はYMSビザを使って仕事をする予定だから、3か月分だけ前払いにしたいと交渉したら、残りの3か月は月払いに変更してくれた。
自分が結んだ契約は、”1 year contract with a 6 month break clause” というものだ。
契約としては1年で、何があったとしても6か月は必ず家賃を払わないといけない。その代わり、6か月を過ぎれば契約を取り消して退去することが可能というものだった。
これは家主と不動産屋によって条件が違い、現にこの物件の次に住んだHammersmithのSovereign Courtのflatは8か月分を前払いした。
契約にかかった費用と生活費
賃貸契約を結ぶ際には手数料などがかかる。
賃貸契約自体にかかる費用としては
- 3か月分の家賃:£2079.99
- 仲介手数料(Admin fee): £280
- 敷金(Security deposit:物件の損傷がなければ返金される):£960
- 物件確保料(この費用は家賃分として補填される):£320
で、もろもろの手数料と3か月分の家賃を合わせて、最初にまとめて払った金額は
£3319.99
で、このうち£960は契約終了後に返却された。
4か月目からは£693.33/月の支払いを3回行い、
家賃関係では6か月の合計として£4439.98だった。
コインランドリーの洗濯で週に1回で£9近く支出があり、
£9×4週×6か月=£216
合計£216程度が6か月の洗濯費でかかった。
また、wifi付ではあったが、電波が弱すぎて全く使い物にならなかったため、自分でsimカードを準備し、これが月に£30ほどした。
£30×4×6か月=£720
合計£720程度が6か月のインターネット代だった。
まとめると、食費や交通費、交際費を除き、
家賃と洗濯、インターネットの6か月分の合計額は
£5375.98
なので、この物件と同じような条件の物件に住むとなると、半年で最低これくらいの支出が必要なことになる。
後は、どれだけ外食したり、地下鉄に乗るか、趣味にお金をかけるかで、事前に必要な金額が決まる。
住み始めて気付いた物件の問題点
さて、後々分かってきたのだが、安いものにはそれなりの理由があって、この物件はいくつかの問題を抱えていた。
例としては
- 洗濯機がない
- 窓が窓として機能していないため、冬場のバスルームがとても寒い
- シャワーの水圧がとても弱い
- 真冬にボイラーが壊れて、1週間近くお湯がでなくなった
- 他の住人のテレビの音や音楽が夜中に聞こえてくる
- 冬が近づくとネズミが出る
- たまに帰宅する家主の息子が曲者
などだ。
洗濯機がない
洗濯機はどの家にもあるものだと思い込んでいたのだが、契約してから
”そういえば下見の時に洗濯機を見ていない”
ということに気が付いた。
もう契約してしまっていたため、時すでに遅し。
イギリスの洗濯機はキッチンについていることも多いのだが、自分の結んだ賃貸契約では家主用のキッチンは使えないことになっていて、洗濯機は使えなかった。
家主のおじいちゃんに尋ねると、
”近くにコインランドリーがあるから、そこで洗濯してね。若いから良い筋トレになるよ”
と笑いながら言われた。
ならば風呂場で水洗いをやろうと考えたが、濡れた洗濯物を干すスペースがない。
あきらめて一番近くのコインランドリーに行ったのだが、Kensingtonにあるコインランドリーは割高(洗濯から乾燥まですると、1サイクルで£10ポンド近くかかる)で、休日休みだったり、夜6時には閉店してしまっていた。
結局自分は週に1度、1キロ近く離れたコインランドリーまで洗濯物を運んで、そこで洗濯していた。
今思えば当時は元気だったなと思う。
やっぱり洗濯機はあるに越したことない。
冬場のバスルームがとても寒い
窓が傾いて閉まらなかったり、窓ガラスがそもそも割れていたため、バスルームの中は外の空気と同じ温度だった。
真冬になると、夜のロンドンは10℃以下になることもあり、隙間風が吹くとシャワーを浴びていても寒さを感じる。
シャワーの水圧がとても弱い
そもそもボイラーが古いので、シャワーの水圧がとても弱い。
ひどい時はシャワーを浴びている時に突然止まってしまうこともあった。
これに隙間風が加わると、かなり寒い。
真冬にボイラーが壊れて、1週間近くお湯がでなくなった
これが一番つらかった。
12月のある日シャワーを浴びようと思ってシャワーを出したのだが、なかなか水が暖かくならない。
おかしいなぁと思って、いったん外にでてしばらくすると家主のおじいちゃんが部屋まで来て、
”ボイラーが壊れちゃったみたい。今修理を頼んでるけど、1週間位お湯がでないし、部屋の暖房も使えない”
と宣告された。
最初は数日位シャワーを浴びなくてもいいかと思ったが、2日経つ頃には、頭がギトギトしてかなりべたべたしてきて気持ち悪くなった。
友達に連絡してシャワーを借りようと思ったが、語学学校の友達はほとんどもう帰国してしまっていた。
シャワーの為だけにホテルに泊まるのももったいない気がしたし、けれどもシャワーをどうしても浴びたいと思い、
結局冷水のシャワーを浴びた。
バスルームは真冬の外気と同じ温度で、水はもちろん冷水だったが、シャワーを浴びたい欲が勝った。
この時は叫びながらシャワーを浴びて、超高速で頭と体を洗った。
身体がぶるぶると震え、歯がガタガタとなる”本物のシバリング”を経験した。
その後温風のドライヤーを体全身に浴びて体を温めてたのは今でもいい思い出だ。
他の住人のテレビの音や音楽が夜中に聞こえてくる
古い家のため、隙間が多く、他の住人の生活音が良く聞こえる。
家主のおじいちゃんが真夜中に2階の部屋で瞑想する時に大音量で流すお経だったり、週末に帰ってくる家主の息子が真夜中に流すクラブミュージックだったり、隣の部屋に住む住人が見るテレビの音が聞こえてくるのだ。
特に隣の部屋とは、実はつながっていて、薄いドアの真裏にテレビがあったから、余計に音が響いてきた。
自分の部屋と相手の部屋の間に木製の扉があって、結構音が聞こえた。

この扉は自分の部屋と隣の部屋をつなぐもので、普段は鍵がかかってるが、相手がテレビをつければその音が聞こえてくるし、自分が風邪を引いて夜中に咳をすると相手を起こしてしまうことがあった。
冬が近づくとネズミが出る
ロンドンの至るところで目に付くネズミだが、冬になると目撃件数が増える。
ロンドンの至るところで目に付くネズミだが、冬になると目撃件数が増える。寒い冬を越すために暖かい住処を探して古い家に住み着くのだそうだ。
最初部屋の中でものすごい速さで移動する黒い物体を目撃した時は、大きな虫かと思って少し恐ろしかったが、後々ネズミだったことが分かった。
ネズミ自体は可愛いと思うが、問題なのは、その糞だ。
特に、自分が使っていた、屋根裏の物置にある”キッチン”の冷蔵庫の裏に小さな穴があって、底が彼らの住処への入り口だったようだ。
なので、”キッチン”の床には無数の黒い粒状の物質が落ちていて、最初は何か分からなかったが、後々それら全てが糞であったことが判明した。
引っ越してすぐの時に、自分の部屋のタンスの中に大量のネズミ駆除剤が入っていたのはこのためだったのだと気が付いた。
そして、糞まみれの空間で今までずっと自炊したり、洗った食器を置いていたことに気が付いて、正直気分がげんなりとした。
たまに帰宅する家主の息子が曲者
家主のおじいちゃんには40歳位の息子がいて、週末になると帰ってきた。
彼は4階の1部屋で過ごすのだが、結局彼と仲良くできなくて自分は退去しようと思った。
夜中に音楽を大音量でかけたり、酔っぱらって階段の踊り場を蹴飛ばして壁をボロボロにしたりであんまり関わりたくないと思っていたのだが、
自分のことをふざけて中国人と言って来くことが続いたので、これがきっかけで退去しようと思った。
イギリス人から見たらアジア人はみんな中国人に見えるかもしれないけど、
自分のことを日本人と知っていて、ふざけて中国人と呼んでくるのは、一種の人種差別だと感じた。(彼には昔日本人の彼女がいて、自分が日本人ということも知っていた)
仲が良い友人にふざけて言われるのであれば冗談だと分かるから良いのだが、
彼は全くどんな人か知らない赤の他人だった。
たかが中国人呼ばわりしただけでと思うかもしれないが、
こっちは家賃を払って住んでいる訳で、嫌な思いをするためにこの家に住んでいる訳ではない。
すぐに家主のおじいちゃんに苦情を言って、その後はそういうことは起きなかったが、家が古くて少し窮屈に思っていたところにこの出来事がとどめの一押しとなって、退去することしした。
不動産会社: iNTERLET
以前の記事で、仲介手数料がかかったとしても不動産屋を挟むのが良いと書いたのは、こういうトラブルがあったときに相談できる相手がいるのがとても助かった経験があったからだ。
ネズミのこと、ボイラーが壊れたこと、家主の息子が問題児なことを不動産屋に報告したらすぐに動いてくれたし、家主のオーナーに連絡を取って話し合いをしてくれた。
家主と借主を比べると、立場的には物件を所有していない借主の方が立場が低いのはしょうがない。
だからこそ、手数料を払ってでも(ただし法外な手数料を請求する不動産屋は除く)安心料として不動産屋を仲介するのはいいことだと思う。
この物件はZooplaで探したのだが、不動産屋はiNTERLETという会社だった。
High Street Kensington駅から歩いて5分位のところにある、こじんまりとした不動産会社だったが、問題が起きた時にちゃんと動いてくれた。
仲介手数料£280で対応してくれたのだから、払う価値のある保険料だったと思う。
(注:2019年6月から法律が変わり、現在不動産屋は借主に仲介手数料などを請求することができなくなった。)
唯一、退去した後に返却されるはずのDeposit £960が期限を過ぎてもなかなか手続きしてくれず、返却されるまでに数か月かかった点を除けば良心的な会社だったと思う。
まとめ
- 自分で賃貸契約を結ぶと、生活の自由度が高まる
- 古い物件は住んでみて初めて分かるトラブルがある
- 家のなかに出入りする人がどんなキャラクターかとても大切
- 不動産の仲介手数料は保険料だと思う