ワーホリ

スコッチウイスキー 旅の始まり

スコットランドの入り口エディンバラ

初めてウイスキーがおいしいと思ったのは、エディンバラにあるThe Scotch Whisky Experienceでのことだった。

医学部5年生が終わった春休みに、エディンバラ大学の臨床実習に参加した。

せっかくだからと、休日にエディンバラの街を散策したのだが、これがまた美しい。

二つの丘の間にある谷間のところにEdinburgh Waverly 駅がり、線路によってOld Town とNew Townに分けられている。

EdinburghといえばEdinburgh Castleだが、これはOld Townにある。

中世の街並みと言われて納得ができる古い街並みだ。

道路は石畳で舗装されていて、丘にできた街のため、階段や起伏、曲がった道路が目立つ。

建物と建物の間に作られた階段は幅が狭いものもがあり、歴史を感じさせる石畳と合わさると、非日常の世界に入り込んだ気分になる。

石で作られた建造物は年月を経るにつれ雨や風の影響を受けて、だんだんと色味に深みがでてくる。

少しすすがかかったように黒く見えるのだが、不潔な感じはまったくしない。

まさに、エイジングという現象が起きており、年月が経つにつれて希少価値がましてくるのだ。

この街は実は海岸からも近い。

海から流れてきた風と共に、カモメの声も聞こえてくる。

この風は街に運ばれてくる間に丘状の地形にあたることによって、時に突風となる。

古い町並みを歩きながら、まだ3月で非常に冷たい海風を肌に浴びると、ここは自分の知っているイギリスの街、リーズとは全く別の場所なのだと実感する。

EdlinburghにあるThe Royal Mileという通りは、Old Townの中心をとおる大通りだ。

Palace of Holyroodhouseという王室の別荘とエディンバラ城を一本で結ぶのがこのThe Royal Mileであり、古い教会やインスタ映えしそうな小道もたくさんある。

また、通りには大道芸や小規模な市場が開かれることが多く、観光客として見ていて飽きない。

このThe Royal Mileをずっとエディンバラ城の方向へ登っていくと、エディンバラ城手前の左手にとある博物館がある。

その名も The Scotch Whisky Experienceだ。

The Scotch Whisky Experience

このThe Scotch Whisky Experienceでの経験は、自分のウイスキー好きに火をつけた衝撃的なものだった。

正直、それまではウイスキーはパーティーで酔っぱらうための飲み物でしかなかった。

自分がまだ小学生位の頃、父親はよく2Lのペットボトルに入ったウイスキーの角を良く飲んでいた。

小学生の子供にとってのウイスキーは、それはただの強烈なアルコール臭でしかなく、とても人間が飲むものではないと思っていた。

リーズ留学中にウイスキーを飲むこともあったが、それはコーラでウイスキーを薄めたWhisky Cokeだったし、罰ゲームで飲むウイスキーのショットなんて、味わう暇さえ与えてもらえなかった。

そんなウイスキーに興味がない自分でも、スコッチという言葉は聞いたことがあった。

それに、スコットランドのお土産を調べていた時、ウイスキーをお勧めしているWebサイトをいくつも見ていたので、きっとここはウイスキーが有名なんだろうなと漠然と思っていた。

たまたま休日で暇だったのと、せっかくエディンバラまで来たのだから一度試してみるかと軽い気持ちで博物館の中に入っていった。

回転扉をくぐり抜けると、奥へと続く一本の木張りの廊下があり、その先にチケット売り場がある。

奥に行く途中右手の部屋を見ると、数多くのウイスキーやらグッズが並んでいる。

お土産としてちょうど良さそうな品物が多数並んでいて、帰りに少し眺めてみることにし、まずは博物館の方へ向かった。

受付でチケットを買いたい旨を伝えると、どのチケットが欲しいか尋ねられる。

ウイスキーのことは全くと言っていいほどよく分からなかったので、とりあえず一番安いThe Silver Tour (£17)に申し込んだ。

ツアーは入場開始の時間が決まっていて、予定の時間になると、ウイスキーの樽の形をしたゴンドラに乗ってツアーが始まる。

この時音声案内のオーディオを貸し出してもらえて、英語や日本語など言語を選択することができる。

ゴンドラに乗りながら幽霊の紳士がウイスキーが作られるまでの解説をしてくれる。

ふーん、ウイスキーってこんな感じで作られるのか、

と、お勉強が終わりゴンドラを降りると、次はテーブルとイスが用意された部屋に案内された。

スコッチウイスキーの4つの地域

テーブルに着くとそこには色が付いた5つの丸印と、グラス、そしてハガキ位の大きさのカードが置かれていた。

なんとなく組み分け帽子の儀式みたいだななんて思っているうちに、目の前のプロジェクターに映像が流れ始め、ナレーターのお姉さんの説明が始まった。

どうやらこのカードはスコットランドをウイスキーの産地ごとに4つに色分けしたもので、テーブルの色付きの丸印はそれぞれの地域を表しているようだ。

スコッチウイスキーはどうやら産地ごとで特徴が全然違うようで、スコッチウイスキーと言っても色々な個性を持ったウイスキーが数多く存在する。

空中から見た草原や綺麗な川、海原の映像が次々と流れる。

ウイスキーが作られる地域、地形はウイスキーの味や香りに強く影響するのだそうだ。

組み分けのカードを裏返してみると、裏にはいろいろな写真が印刷されていた。

青りんごやはちみつ、バニラ、鉛筆、ゴム、革靴、苔。

お姉さん曰く、これらはウイスキーの香りや味を表現するときに使われるのだとか。

はき古された革靴の香りがして、苔の味がするウイスキー

と言われても、とてもおいしそうには聞こえないのだが。。。

いやはや、ウイスキーとは不思議な飲み物だ。

”では、カードの青色の部分をこすってみてください”

そういわれて親指の腹でこすってみると、なんと、甘い香りがするではないか。

”次はカードの赤い部分をこすってください”

今度は燻製のような、煙を想像させる匂いだ。

”これらの匂いはそれぞれの地域のウイスキーの特徴を表しています”

”今目の前にグラスと色のついた丸印があると思います”

”あなたの気に入った匂いはどれでしょうか?気に入った色の丸印の上に、あなたのグラスを置いてください、その地域のウイスキーを試飲して頂きます”

”もし、全ての特徴を兼ね備えたウイスキーをご希望の方は、真ん中の丸印にグラスを置いてください”

素直にこの企画は面白いと思った。

今までは、ただの刺激臭の強い、度数の強い酒だったウイスキーだが、地域ごとの特徴が織り込まれた、繊細な香りと味を楽しむ探る楽しさがあることが分かった。

本物のおいしさ

”今日何種類かウイスキーをご用意いたしましたが、Islay(アイラ)地域のお酒はLaphroaig(ラフロイグ) 10年です”

”ただこのお酒は非常に癖が強く、かなり勇気のある人が飲むお酒です、どなたかチャレンジしてみたい方はいらっしゃいますか?”

自分の悪いところなのだが、このように言われると、どうしても試してみたくなってしまうのだ。

怖いもの見たさとも言えるが、スコッチウイスキーという未知なる飲み物に挑戦してみたいという思いがあった。

お姉さんがグラスに注いでくれたLaphroaigは透き通った黄金色をしていて、薄暗い室内を照らす電球から漏れる光が、揺れる水面で艶めかしくまたたいていた。

もちろん、照明の加減も調節されてはいたが、非常に美しい芸術品を眺めているような感覚だ。

飲み口に鼻を近づけると、個性の塊のような、強烈な燻製香が鼻腔に広がる。

ただ、不快という言葉は全く頭の中に浮かばず、焚火に当たる時に感じる暖かさのように、気持ちを落ち着かせてくれる匂いだった。

初めてのスコッチウイスキーを口に含むと、口いっぱいに広がる燻製香と一緒に、かすかではあるものの、はちみつのような深い甘味が舌の奥を刺激する。

自分の知っている、父親が飲むウイスキーや、パーティーで飲むショットのウイスキーとは全くの別物で、

いつまでもこの深みを感じていたいと思うほどの酒だ。

うまい、非常にうまい。

ウイスキーってこんなに美味しいのか!

衝撃であった。

この一杯を経験して、もっとウイスキーの事を知りたいと思うようになったし、3年後に再びスコットランドに戻ってくることになるのだ。

その土地で頂く地酒のうまさ

初めてのスコッチウイスキーとの出会いに衝撃を受け、お土産コーナーでいくつかウイスキーを買い込んだ。

もちろんラフロイグ 10年の小瓶も買った。

エディンバラ大学での実習が終わり、日本に帰国して数か月たった頃、またあの感動を味わいたいと思いラフロイグをグラスに注ぎ飲んでみた。

そして、以外な発見をする。

なんと、

まずかったのだ!

何が起こったのか全く分からなかった。

同じラフロイグであるはずなのに、

あの感動した燻製香は、なんだか正露丸のような匂いだし、

何より酒が苔を飲んでいるような感じがして、表現としては青臭いという言葉が最初に出るほどだったのだ。

ちなみに私は一般家庭で生まれ育ったため、食卓に苔が並んだことは一度としてなかったし、苔を実際に食べたことはない。

それでも、苔の味と思うのは、すごく不思議である。

飲み物自体は全く同じだし、グラスも全く同じ、飲み方も全く同じなのにだ。

ただ、唯一違ったのは、飲んだ場所だ。

エディンバラでは、Islayではないものの、スコットランドの風を肌で感じ、街の匂いを胸いっぱいに吸い、エディンバラの食事をし、五感でスコットランドを感じている時に飲んだラフロイグ。

日本で飲んだラフロイグは、日本に帰国し、日本の空気を吸い、日本の食事を取り日本という環境に再び順応してから飲んだラフロイグだった。

医学的にはこれらが本当に味覚、嗅覚に影響するかは不明だ。

しかし、自分の感覚として、やはりスコットランドで飲んだ、The Scotch Whisky Experienceで初めて飲んだウイスキーが格別に美味しかったのだ。

最初にラフロイグを飲んで、既に5年以上経過し、今では日本のバーでのむラフロイグのうまいと思うようになった。

けれども、いつかまたスコットランドに戻って、欲を言えばIslay島でラフロイグを飲んでみたい。

あのラフロイグの感動をもう一度。

五感で味わう

日本はとても恵まれていて、世界中のおいしい食べ物やお酒をお金を出せば味わうことができる。

特に、ウイスキーなんかは、商品としてはどこで買っても基本的には同じはずだ。

けれども、個人的にはそれだけでは得られない感動があると思っている。

日本で飲むスコッチウイスキーや、フィッシュアンドチップスもおいしいが、

そこには自分がイギリスで感じたその土地の匂いや風土、雰囲気、人々との会話はない。

五感全てを使って、食事、飲みものを体験するという部分が抜けているのだ。

医学的には、自分が記していることが本当に正しいのかは分からないが、

あくまで自分は正しいと思っているし、

リーズ大学で受講したFood Scienceの講義でも、味覚以外の要素も味わいにはとても大切だと言っていた。

いくら日本が便利な国であっても、

自分の足で現地に赴いて、体験する、リアルな経験をするということを楽しめる人になりたいと思う。

まとめ

  • おいしいものは、産地で頂くべし
ABOUT ME
あき
ハリーポッターの世界にあこがれた高校生が、大学時代と初期研修後にイギリスに留学。10年以上どうしたら英語が上達できるか考え続け、合計約3年間イギリスに滞在。ようやく自分なりの回答を見つけ、現在は次の海外進出に向けて準備中。美容皮膚科医。イギリス留学、英語について発信するのが何よりの楽しみ。