前回の記事では、冠詞⇒名詞の順番に理解するという、冠詞の大原則について説明した。
今回は冠詞の一つ、”a”について解説したいと思う。
“a”の大原則となる意味
まず最初に、”a (an)”の大原則となる意味について解説したい。
自分にとって、”a/an”は、
同じ種類のものが沢山あるうちの1つで、りんかくをひと筆書きで描ける形をもっているもの
というイメージだ。
どういうことかと言うと、”a/an”を使うためには、”a/an”を付けて表現したい名詞が以下の条件をそろえている必要がある。
- 他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと。
- まとまった形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと。
これらの条件を満たす場合に”a/an”を使うことが、基本の意味だ。
これは、中学校でならう”a/an”の使い方で習うのとほぼ同じ意味である。
例えば、
“an apple”といった場合に、
- 他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと。
- まとまった形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと。
がどういうことか考えてみたい。
他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと。
an appleと言った場合は、世の中には沢山のリンゴがあるが、そのなかのうちの一つという意味である。
目の前に1個だけリンゴがあるときに、
“There is an apple on the floor”
ということができる。

実際に見えているのは一つのリンゴで、これ以外には目に見えるリンゴがない。
しかし、”a/an”の意味は
”他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと”
であり、”a/an”と言った際に、たとえ1つのリンゴを見ていたとしても、
”目の前にある1個のリンゴ以外にも、世の中には沢山のリンゴがある”
という意識が、多少なりとも含まれることになる。
つまり、
“a/an”を使う時には、ここにはないリンゴというものが世の中にはある、
という意識が働く。

“There is an apple on the floor” を日本語に訳せといわれた場合、
”床に1個のリンゴがあります”
と答える人がほとんどだと思う。
もちろん、中学校の試験では正解だし、ちゃんと点数がもらえると思う。
しかし、”a/an”の意味をちゃんと意識して、がんばって日本語に直してみようとすると、
”そこには、世の中には同じものが沢山あるが、そのうちの1つで、ちゃんと形があるリンゴというものが床の上にある。”
という感じになるだろう。
英語の勘の著者は “a”の意味についてこのようなアドバイスをしている。
Aを特にOne of manyと理解すると日本人には理解しやすい場合があります。
「多くあるなかでも、そのうちの一つ」と理解します。
上川一秋著、英語の勘 1 名詞 冠詞、単数/複数形の使い方、2018、Nippondream.com Kindle版、第4章 パターン 3 A(不定冠詞)、理解のコツ (3) Aを ONE OF MANY と理解する
まさに、”a/an”は日本語の1つという意味だけではなく、
他にも同じようなものが沢山あるという意識が含まれているのだ。
まとまった形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと。
“a/an”にはもう一つ大原則となる意味があり、形を持ったものを表現するといことだ。
形というのは、まとまった1つとしての形であり、分解されていないという意味だ。
日本語でリンゴと言った場合、
この1個の、そのままの姿のリンゴも

これらのカットされたリンゴも

どれも全部リンゴである。
もちろん英語でもこれら全てがリンゴであることに間違いはない。
しかし、英語の場合、下の写真にあるカットされたリンゴは、”an apple”のイメージからかけ離れていると考えるのだ。
“a/an”を使うには、いくつもあるうちの1つという意味を持っていることに加えて、
”まとまった形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと”
という条件が伴うからだ。
この写真にある、カットされたリンゴというのは、もともとのリンゴ1個が分解された慣れの果てである。

これらカットされたリンゴには、
もともとの切る前のリンゴにみられた、あの、まるまるとしたまとまったイメージがなくなってしまっている。
もちろん、切られたリンゴは1切れとして数えることができるのだが、まるまるとしたイメージではなく、バラバラになったものである。
英語において”a/an”を使ったり、1つ、2つと数えるためには、
この、パーツがそろって形がまとまったイメージ
が必要である。
1切れのリンゴ、2切れのリンゴと数えることもできるのだが、
この場合は one apple、two applesと数えることができない。
なぜなら1つの切る前のリンゴのように、まとまった1つとしてのイメージがなくなってしまっているからだ。
切れたリンゴを数えるときは、one piece of apple, two pieces of appleなどとする必要がある。
一切れのリンゴは数えられるのに、an appleと言えないのは変だと思うのは、
“a/an”の持つ、まとまっているというイメージが抜けているために起こると考えられる。
この考え方はリンゴ以外のものでも同様で、「日本人の英語」という本に以下の例が載せられていた。
先日,アメリカに留学している日本人の友達から手紙がきたが,その中に次の文章がいきなり出てきた.
Last night, I ate a chicken in the backyard.(昨日,鶏を1羽[捕まえて,そのまま]裏庭で食べ[てしまっ]た.)
これをみたときの気持ちは非常に複雑で,なかなか日本語では説明できないが,ちょうどあてはまる英語の決まり文句でいえば, I didn`t know whether to laugh or to cry. という気持ちであった.
マーク・ピーターセン著、日本人の英語、岩波書店、2018、10p
やはり、”a/an”と聞いた瞬間、英語のネイティブは1つのまとまった形のものをイメージするようだ。
これは”a/an”の使える、まとまった形をもつ鶏(a chicken)

お次は、”a/an”を付けることができない、まとまった鶏の形から変形してしまった、鶏肉の料理。

このフライドチキンも1つ、2つと数えることはできるのだが、
ニワトリのイメージからはかなりかけ離れた姿になってしまっていることを意識して欲しい。
やはり、”a/an”を使うには、切り刻まれる前の、
まとまった形を持ったニワトリというイメージが伴うのだ。
個人的には、
切られたリンゴや鶏肉などは数えられないから不可算名詞だと説明するのは好きではない。
なぜなら、これらはリンゴ1切れ、鶏肉1つと数えられるからだ。
一番大事なのは、
数えようとしているものに、”a/an”の持つ、まとまった形というイメージが伴っているか
ということだと思う。
そして、このまとまった形というイメージが伴わない場合は、
“a/an”という、まとまった形では数えられないので、不可算名詞となる。
なので、a piece of ~という方法で数えるという考え方の方が、自分は納得できる。
みなさんも、今後”a/an”を使う時には、このまとまった感じというのをイメージしてみて欲しい。
“a/an”の大原則となる意味からの派生
ここまで解説してきた、
- 他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと。
- まとまった形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと。
というのは、”a/an”の一番大切なイメージとなる。
これはまさに、ぬいぐるみに例えると、めりたんそのものだ

このイメージがしっかり頭の中に入っていて、自分で使えるようになると応用が利く。
“a/an”の用法について文法書を開くと、この記事にも書いたとおり、色々な用法が出てくる。
- an apple のように、一つという意味のa/an
- a fear of heights のように、数えられない名詞について種類を意味するa/an
- a democracy のように、国を表現する時に使われるa/an
- an angry Aki のように、人の感情を表現する時に使われるa/an
- a full moon のように、月の状態を表す時に使われるa/an
- a Mr/Ms Turner のように、Mr/Ms の前について、~って名前の人という意味のa/an
しかし、今回解説した”a/an”の大原則となる意味をしっかりと理解していれば、
上記のような色々な用法でなぜ”a/an”が使われているのか理解できるようになる。
これらの用法は、大原則となる意味を違う角度から見ているだけに過ぎないと思う。
なので、”a/an”の大原則となる意味をめりたんだとすると、
これらの沢山の用法は、めりたんのこんな姿を見ているので、めりたんだと分かりにくいのと同じな気がする。
では、”a/an”の沢山ある用法をどのように見たら、”a/an”の大原則となる意味に見えるかという疑問がでてくる。
これについては、別の記事で解説したいと思う。
まとめ
- “a/an”の大原則となる意味は
- 他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと。
- まとまった形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと。
- “a/an”の色々な用法も大原則となる意味からきている。
- a chickenを食べてはいけない。
参考文献
他にも同じ種類のものが沢山あることが分かっていて、そのうちの1つのものについて話すこと。
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ちゃんと形を持ったものであり、輪郭をひと筆書きで描けるものについて話すこと。
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